炭素回収プロジェクト開発事業者の概要
炭素回収・利用・貯留(CCUS)および直接空気回収(DAC)は、2030年排出削減目標の達成に向けて急速に拡大している脱炭素技術分野です。Global CCS Instituteの統計によれば、2026年時点で世界に628のCCUSプロジェクトがパイプラインにあり、2023年比で60%増加しています。稼働中の回収・貯留能力は年間約5,000万トンに達しており、2030年には5億トン以上へ拡大する見込みです。
主要技術方式と事業者タイプ
炭素回収プロジェクト開発事業者は、技術方式によって大きく3つに分類されます。
- 直接空気回収(DAC)専業
- Climeworks、Carbon Engineering、CarbonCaptureなど、大気中から直接CO2を回収する技術に特化。スイスのClimeworksは世界最大のDAC施設Mammoth(年間3.6万トン)を運営し、2030年までにメガトン級、2050年までにギガトン級への拡大を目指しています。米国OccidentalがCarbon Engineeringを11億ドルで買収して設立した1PointFiveは、テキサス州でSTRATOS施設(年間50万トン)を2025年末に稼働開始予定です。
- 産業排出源回収(ポイントソース)
- SLB Capturi、三菱重工、東洋エンジニアリングなど、発電所・製鉄所・セメント工場などの排出源から回収。ノルウェーのSLB CapturiはBrevik セメント工場で世界初の産業規模炭素回収設備(年間40万トン)を完成させ、進行中の7プロジェクトで合計年間100万トンの回収能力を持ちます。
- 統合型デベロッパー
- 回収・輸送・貯留までのバリューチェーン全体を手がける事業者。日本では経済産業省主導で9つの先進的CCSプロジェクトが選定され、日本CCS調査株式会社を中心に2030年までに年間1,300万トンの貯留能力確保を目指しています。
市場規模と投資動向
CCUS市場は2025年の58.2億ドルから2030年には177.5億ドルへ、年率25.0%で成長すると予測されています(Markets and Markets)。業界全体で約33万人が従事し、1,100社以上のスタートアップが参入しています。特許出願数は5,700の出願者により17,400件に達しており、技術革新が活発です。
2026年は複数のメガプロジェクトが稼働を開始する転換点となります。米国ではAir ProductsのLouisiana Clean Energy Complex(年間500万トン以上)、Nucor-ExxonMobilの鉄鋼CCS(年間80万トン)、デンマークのProject Greensandが運転開始予定です。
地域別の展開状況
| 地域 | 特徴 | 主要プロジェクト |
|---|---|---|
| 北米 | 35年以上の実績、最大市場 | STRATOS(米国)、Quest(カナダ) |
| 欧州 | ノルウェーLongship計画が牽引 | Brevik、Northern Lights |
| 中東 | 石油産業との連携でDAC拡大 | Climeworks サウジアラビア拠点 |
| アジア | 日本・中国が政策主導で推進 | 苫小牧CCS(日本) |
カーボンクレジット市場との連動
DAC事業者の多くはカーボンクレジット販売を収益源としています。Climeworksは2026年までに年間5万トン以上の認証済み除去クレジットを供給し、Stripe、Schneider Electric、NYKなどが購入契約を締結。クレジット価格は技術方式や認証基準により大きく異なりますが、高品質DAC由来クレジットは1トンあたり600-1,000ドル水準で取引されています。
今後の展望と課題
2026年現在、CCUSは技術進歩・政策インセンティブ・プロジェクトパイプライン拡大により勢いを増していますが、気候目標達成に必要なスケールには依然として大きなギャップがあります。IEAは2050年ネットゼロシナリオにおいて年間76億トンのCO2回収が必要と試算しており、現在の能力の150倍以上の規模拡大が求められます。
重工業の脱炭素戦略担当者にとって、技術実績・財務安定性・地理的適合性を持つパートナーの選定が、2030年目標達成の鍵となります。このデータセットは、グローバルなCCUS/DACプロジェクト開発事業者の網羅的な情報を提供し、協業候補の発掘・評価を支援します。