工業用バーナーの低NOx化改造市場の現状
日本の大気汚染防止法では、ばい煙発生施設に対してNOx(窒素酸化物)の排出基準が定められており、製鉄・化学・窯業などの業種では既設バーナーの低NOx化が喫緊の課題となっています。令和4年10月の法改正により、燃料の燃焼能力要件からバーナーの文言が削除され、規制対象が明確化されました。
バーナー全体を更新する従来の手法と比較して、既設炉体を活かした改造(レトロフィット)は工期を3分の1以下に短縮でき、投資コストも大幅に削減できるため、多くの工場で採用が進んでいます。特に東京都では低NOx・低CO2小規模燃焼機器認定制度が運用され、NOx排出濃度とエネルギー効率の基準に基づいた機器認定が行われています。
主要な低NOx化技術
- 高温空気燃焼技術(フレームレス燃焼)
- 炉内1000℃時にNOxを10ppmまで削減する技術。株式会社エコムのecoNext-Nシリーズが代表例で、日本のNOx排出基準を大きく下回る性能を実現しています。
- 二段燃焼方式
- 中外炉工業のFHC-IIIc型に採用される技術。700℃までの予熱空気を使用しながらも、段階的な燃焼制御によってNOxを極限まで削減します。
- リジェネレイティブバーナ(蓄熱式)
- 日本ファーネスのHRSバーナが代表例。セラミックハニカム蓄熱体と独自の四方切換弁により、高温排熱回収とフューエルステージング燃焼を組み合わせ、省エネとNOx削減を同時達成します。
改造事業者の選定ポイント
低NOx化改造を成功させるには、既設炉の特性を理解した上で適切な燃焼技術を選択できる事業者の選定が重要です。ホクネツ株式会社のように全国4拠点から対応し、メーカー横断で年間4000台以上の施工実績を持つ事業者や、三建産業株式会社のように1949年創業以来30ヶ国以上への納入実績を持つ総合プラントメーカーまで、事業者の専門性と対応範囲は多岐にわたります。
実際の改造事例では、既設の灯油バーナーから13Aガスへの燃料転換に伴う低NOx化改造により、規制基準をクリアしつつ、ランニングコストを約3分の1まで削減できたケースも報告されています。
今後の展望
2026年4月からは日本のGX排出量取引制度が大規模産業排出者に対して義務化され、年間CO2排出量10万トン超の企業が対象となります。これに伴い、NOx削減だけでなくCO2削減も同時に達成できる蓄熱式バーナーへの改造需要がさらに高まると予想されます。トヨタ自動車と中外炉工業が共同開発した世界初の汎用水素バーナーのように、カーボンフリー燃料への対応も視野に入れた改造計画が求められる時代となっています。