EU医療機器市場参入の最初の関門
2021年5月のEU MDR(医療機器規則)完全適用以降、EU市場で医療機器を販売するには、指定された公告機関(Notified Body)による第三者認証が義務化されました。クラスIIa、IIb、III、およびIVDRクラスB、C、Dの全デバイスが対象となり、旧指令時代の約96機関から現在は約50機関まで減少している状況です。
公告機関選定が製品化スケジュールを左右する
2026年時点で公告機関の審査待ち期間は平均13~18ヶ月に達しており、複雑なデバイスではさらに長期化します。2027~2028年の旧指令からの完全移行期限を控え、申請が集中することで2026~2027年にボトルネックが発生すると予測されています。認証取得の遅延は製品供給停止、市場投入の遅れ、そして競合優位性の喪失に直結します。
| 指定状況 | 機関数 | 備考 |
|---|---|---|
| MDRのみ指定 | 37機関 | 従来型医療機器専門 |
| MDR/IVDR両方指定 | 13機関 | 体外診断機器も対応可 |
| IVDRのみ指定 | 1機関 | 診断薬特化型 |
各機関の専門性と審査範囲の違い
公告機関は欧州委員会のNANDOデータベースに登録されていますが、すべての機関があらゆる種類のデバイスを審査できるわけではありません。各機関には指定範囲(scope of designation)があり、対応可能なデバイスコード、リスククラス、技術分野が異なります。例えば:
- 整形外科インプラントに特化した機関
- 能動埋込型デバイス専門の機関
- ソフトウェア医療機器(SaMD)の評価実績が豊富な機関
- 体外診断機器専門の機関
貴社製品の技術特性に合致した専門性を持つ機関を選ぶことで、審査の質と効率が大きく向上します。
費用と審査体制の透明性
欧州委員会は公告機関に対し、料金体系の公開を推奨していますが、実際には多くの機関が個別見積もりベースで対応しています。一般的な費用構成は:
- 初回認証審査
- ISO 13485適合性評価、技術文書レビュー、製造現場監査を含む包括的評価。デバイスクラスと複雑性により€20,000~€100,000以上
- 年次サーベイランス監査
- 5年間の認証有効期間中、毎年実施。初回審査費用の30~50%程度
- 予告なし監査
- 5年間に最低1回実施。追加費用が発生
地政学的考慮事項:Brexit後のイギリス機関
Brexit以降、イギリスに本拠を置く公告機関(BSI等)は引き続きEU MDR/IVDRの指定を維持していますが、将来的な規制の分岐可能性を考慮する必要があります。一部の企業は、EU加盟国内に本拠を置く機関(ドイツのTÜV、フランスのLNE/G-MED等)を戦略的に選択しています。
2026年以降の戦略的対応
「コンサルタントから紹介される2~3の機関だけでなく、すべての選択肢を俯瞰して比較することが、リスク分散と最適なパートナー選定の鍵となります。」
認証機関の選定は単なる事務手続きではなく、製品のライフサイクル全体に影響する戦略的パートナーシップです。審査期間、専門性、コミュニケーション品質、長期的な関係構築の可能性を総合的に評価することが重要です。