プライベートエクイティが牽引する医療サービス産業の再編
プライベートエクイティ(PE)による医療サービス事業への投資は過去10年で劇的に拡大し、業界構造を根本から変えつつある。2025年のグローバルヘルスケアPE案件総額は1,910億ドルに達し、2021年の記録を更新した。この成長を支えているのは、医療提供者向けITサービスが前年比で倍増し320億ドルに達したこと、そしてプロバイダー関連サービス案件が57%増の620億ドルに達したことである。
Mergr社のデータベースによれば、PE投資先の医療サービス企業は1,290社に上り、Crunchbaseの集計では医療分野全体で1,403社のPE出資企業が存在する。これらの企業は米国医療市場の売上高ベースで4%を占めるに過ぎないが、病院分野では約460施設をPEファームが所有しており、過去20年で25倍に増加した。
主要PEファームの戦略と投資領域
KKRは小児メンタルヘルスケア分野のBrightlineに1.05億ドルを投資し、企業価値7.05億ドルで評価した。また、2018年には救急医療人材派遣のEnvision Healthcareを99億ドルで買収し、病院の救急部門スタッフィングと急性期後ケアサービスを統合した。
TPGのヘルスケアポートフォリオは次世代ケア提供プラットフォームに集中しており、LifeStance、Kelsey-Seybold、Monogram Healthといった企業に投資している。また、WellSky、Convey、BGB Groupなどの医療テクノロジー・サービス企業にも資本を投下し、後期バイオ医薬品、医療診療所統合、次世代診断にフォーカスしている。
Carlyleは474億ドルの運用資産を抱え、過去25年にわたりヘルスケア分野に投資してきた。直近10年で投資ペースが加速し、83案件に220億ドルを投下、現在33社のアクティブポートフォリオを保有している。創傷・皮膚ケアのConvaTec、臨床診断のOrtho-Clinical Diagnostics、医療用品流通のMedlineなどが代表例である。2025年にはPsychiatric Medical Careの買収も報じられている。
Bain Capitalは世界最大級のヘルスケア投資チームを擁し、ヘルスケアITのZelis、インド製薬大手のEmcure、韓国のバイオ医薬企業Hugel、日本の田辺三菱製薬、米国の透析ネットワークUS Renal Careなど、製薬・医療機器・診断・ライフサイエンスツール全般に投資している。
2026年の見通しと投資環境
2025年を通じて不均一な回復を見せたヘルスケアPE案件は、2026年にはより一貫した活況を呈すると予測されている。金利低下、潤沢なドライパウダー、LP(リミテッドパートナー)の流動性需要の高まりが、2018-22年サイクルで先送りされてきた案件の積滞を解消するとみられる。
| セグメント | 案件総額 | 前年比 |
|---|---|---|
| プロバイダー関連サービス | $62B | +57% |
| プロバイダーIT | $32B | +100% |
| 全体 | $191B | 過去最高 |
ただし、PE出資企業の破綻件数も2023年に17件と急増しており、2019年の8件から倍増した。成長率も2018年の25%から2024年第1四半期には1%未満に鈍化しており、市場の選別が進んでいることを示している。緊急医療、皮膚科、歯科、画像診断、循環器、女性医療といった専門領域は引き続きプラットフォーム構築資本を惹きつけている。